
妊娠のリスクがあるにもかかわらず、男性が避妊をしないケースは意外と多いもの。特に忙しいキャリア女子にとって、パートナーが避妊に協力的かどうかは今後の人生設計にも直結する重大な問題ですよね。本記事では、男性が避妊をしない理由や背景を多角的に探りつつ、女性が抱える不安や対処法を分かりやすく解説します。
男性が避妊をしない理由とは?
男性が避妊をしない理由は一つではなく、快感優先の心理から知識不足、女性への配慮の欠如など複数の要因が絡み合っている場合がほとんどです。ここでは代表的な理由をいくつか取り上げ、その背景を探っていきましょう。
快楽や衝動を優先してしまう
「コンドームをつけると気持ちよくない」「生の方が快感が大きい」といった声は、避妊しない男性に多く見られる理由です。実際に性行為において、コンドーム着用による締め付け感や心理的な違和感を嫌う男性も少なくありません。「付けると萎えてしまう」「ムードが途切れる」という主張もよく耳にします。こうした"場の雰囲気や衝動を損ないたくない"という思いが強いと、結果的に避妊がおろそかになりがちです。
リスク認識の甘さ
男性側に「妊娠させてしまうかもしれない」というリアルな危機感が薄いことも、避妊しない大きな理由です。特に10代や20代前半の若年層に多い傾向として、「安全日なら大丈夫」「自分は大丈夫」という根拠のない自信を持っているケースがあります。安全日・危険日の概念を正しく理解していない、あるいは経口避妊薬(ピル)や緊急避妊薬(アフターピル)の存在を十分に知らないといった性知識の不足も背景にあります。
女性任せにしてしまう心理
「自分がコンドームを買うのは気恥ずかしい」「相手がピルを飲んでいればいい」といった考えから、避妊を"女性任せ"にしようとする男性も一定数存在します。日本の場合、コンドームが最も一般的な避妊手段であるため、男性が積極的に装着するかどうかで避妊の成否がほぼ決まると言っても過言ではありません。それにもかかわらず「女性のほうがうまく対処してくれるだろう」という甘い見通しを持ち、具体的な対策を講じない男性がいるのも事実です。
「責任は取る」と言いつつ実行が伴わない
20代の一部には「万が一妊娠したら結婚すればいい」と考え、あえて避妊しない男性もいます。お付き合いが長く、結婚が視野に入っているカップルであれば「できちゃった婚でもいい」と思う男性もいるでしょう。しかし、実際に妊娠が判明するとパニックになり、中絶を提案したり、責任を回避しようとしたりするケースも少なくありません。つまり「口先だけ」の責任意識は、本当の意味で女性を安心させる保証にはならないのです。
男性の避妊意識に関するデータ・統計
日本における男性の避妊意識や行動を示す調査はいくつか実施されています。数字から見えてくる現状を整理することで、男性が避妊をしない理由とその背景をさらに具体的に理解できます。
避妊なしの性交渉経験者は意外に多い
ある調査では、妊娠を望まない性交で「避妊をしなかったことがある」男性は
- 15~29歳:24.7%
- 30~64歳:44.7%
という結果でした。若年層で約4人に1人、成人男性で約2人に1人が「望まないのに避妊しなかった経験がある」ということになります。さらに別の2023年調査(15~29歳対象)でも、避妊せずに性交渉した経験がある人は男性29.8%、女性39.0%という報告があり、わずかながら増加傾向が続いています。
このような調査結果からは、「特別にだらしない人」のみが避妊を怠っているわけではなく、幅広い層で"避妊なし"の性行為が行われている現実が浮かび上がります。
「必ずコンドームを使用する」男性も多数派だが…
一方で、「毎回必ずコンドームを使用している」という男性も多く存在します。調査によっては15~29歳男性の約82.5%が「いつもコンドームを使用している」と回答した例もあります。ただし「ほとんど着けない/毎回着けない」男性が約12%いるというデータもあり、少数ではあるものの、常習的に避妊をしていない男性が一定割合いるのも事実です。
避妊は誰の役目? 男女で意識がすれ違う
さらに興味深いのが、「避妊は誰がするか」という問いに対する回答です。
- 男性の58.5%が「自分がする」
- 女性の56.0%が「相手(男性)がする」
- 「二人で協力する」と答えた人も3割以上
一見、男性も女性も「男性側が主体」という認識が高いようにも見えますが、現場では「女性から強く言われないとコンドームを付けない」男性や、「パートナーが避妊をしてくれずに困っている」という女性の声も後を絶ちません。実際、「女性に頼まれなければコンドームをつけない」と答えた男性は30~64歳で37.1%と高く、年齢が上がるほど男性の自主的な避妊意識が低下する傾向が見られるのです。
パートナー間の意識ギャップと女性の不安
避妊にまつわる問題は、男女間のコミュニケーションの乏しさや意識のすれ違いが原因になっていることも多々あります。特に女性側の主導権が弱いと、男性に合わせてしまい結果的に望まないリスクを背負うケースが起こりやすくなります。
「言いづらい」「言っても聞き入れてもらえない」
避妊を巡るコミュニケーションは、女性側にとって大きなストレスとなりがちです。ある調査では、女性の約19.7%が「相手に避妊してと言いづらかった」と感じており、16.6%は「避妊したいと言ったが拒否された」という結果が出ています。実際、「コンドーム付けると気持ちよくない」「俺は大丈夫」と男性に言われてしまうと、女性はパートナーを怒らせたくない思いから強く主張しづらくなりがちです。
責任を取ってくれるのか? 将来への不安
男性が避妊に協力的ではないほど、「万が一妊娠した場合どうなるのか?」という不安が女性にのしかかります。なかには「結婚するから大丈夫」と口先だけで言う男性もいますが、いざ妊娠が判明すると中絶を迫られるケースもあり、女性に大きな心理的・身体的負担を強いることになります。特にキャリア女子にとって妊娠・出産のタイミングは仕事への影響が大きく、パートナーが協力的でないと「この先、仕事を続けられるのか」「経済的・精神的にやっていけるのか」と深刻な悩みにつながるのです。
「避妊しない=大切にされていない?」と感じる
「好きだから生で感じたい」「彼女との距離をもっと近く感じたい」といった言葉は、一見ロマンチックにも思えますが、実態としては女性の身体的リスクを軽視している発言でもあります。女性が「ちゃんとコンドームを付けてくれる人のほうが大切にされている気がする」と感じるのは自然なことです。避妊しない男性との関係は、女性に「自分が軽んじられているのではないか」という疑念を生じさせやすく、関係性の不和を招くきっかけにもなり得ます。
年代別・未婚と既婚で見る避妊行動の違い
男性の避妊意識は年代や婚姻状況によっても大きく異なります。性教育を受けるタイミングや世代ごとの文化的背景が違うため、若年層と中高年では避妊に対する考え方にギャップが生じやすいのです。
10代後半~20代前半:知識はあっても実践しづらい
若い世代では学校やSNSなどである程度の性知識を得る機会が増えていますが、「自分たちは大丈夫」という過信や、性行為そのものに対する好奇心の強さから避妊がなおざりになりがちです。実際、17~19歳の約13%が「避妊の必要性を感じていない」という調査結果もあります。また、この年代での妊娠は将来設計において大きな影響を及ぼすため、女性にとっては精神的な負担がより大きくなるといえます。
20代~30代前半の未婚カップル:結婚の意識とリスク管理
働き盛りかつプライベートでも充実したい時期ですが、望まない妊娠によってキャリアプランが崩れる不安は大きいもの。真剣交際をしているカップルならば「いざ妊娠しても結婚すればいい」と考える場合もありますが、一方で「まだ結婚の予定がないのに妊娠は困る」という女性は少なくありません。男性が避妊してくれないためにアフターピルを何度も服用する女性もおり、身体的・金銭的な負担が女性だけに偏ってしまう現状が続いています。
30代後半~既婚者:子ども計画と避妊意識のズレ
既婚カップルの場合は「子どもをいつ・何人ほしいか」によって避妊の要否が変わってきます。とはいえ、夫側が「もう妊娠する年齢でもないだろう」と勝手に思い込み、避妊を軽視するケースや、「2人目はもういい」と妻が思っていても夫が避妊に非協力的なケースもあるようです。なかには妻が"多産DV(望まない複数回の妊娠を強要される状況)"の被害に遭っている例も報告されています。日本の既婚カップルは約8割がコンドームを主な避妊手段としており、夫が積極的に装着しない限り、妻が一方的にリスクを背負う構造が依然として根強いといえます。
女性側にのしかかるリスクとキャリアへの影響
男性が避妊をしないことで、最も大きな影響を受けるのは女性自身です。特にキャリア女子にとって望まない妊娠は人生設計を大きく狂わせる可能性があります。
望まない妊娠のリスク
まずは何と言っても、妊娠そのものへのリスクです。妊娠・出産は女性の身体に大きな負担をかけ、仕事やライフスタイルを見直す必要も出てきます。妊娠が職場でどのように受け止められるのか、産休・育休を取得しやすい環境なのかなど、キャリア女子には切実な問題です。パートナーが「何とかなるよ」と楽観的だと、女性はより不安を募らせるでしょう。
心理的ストレスと性感染症の懸念
妊娠リスクだけでなく、コンドーム不使用の性行為は性感染症(STD)にかかるリスクも高まります。クラミジアや淋病、ヒトパピローマウイルス(HPV)などの感染が広がると、将来的に不妊や子宮頸がんなどのリスクが増大する可能性も否定できません。身体的なダメージだけでなく「もし感染していたらどうしよう」という強いストレスを抱えることにもなります。
経済的・社会的リスク
もし妊娠や中絶が必要となった場合、女性が多くの費用を負担せざるを得ない状況になることもあります。特に未婚での妊娠やパートナーが協力的でない場合、医療費はもちろん、精神的ケアにかかる費用や時間的ロスもすべて女性が背負うケースが目立ちます。こうしたことが積み重なると、キャリアの継続や昇進・転職といった将来設計に悪影響を及ぼしやすいのです。
男性と向き合うための具体的アプローチ
では、実際に「避妊してくれない男性」とどう向き合えば良いのでしょうか。関係を断ち切る前に試せるコミュニケーションや協力的にさせる工夫がいくつかあります。忙しいキャリア女子でも取り組みやすい方法を紹介します。
1. 正しい情報を共有する
「生のほうが気持ちいい」「女性がピルを飲めば妊娠しない」などの誤解は、正しい情報を知らないがゆえに生まれます。まずは、性感染症や妊娠のメカニズムなどを分かりやすくまとめた記事や書籍、専門家の発信などを男性に示し、リスクを具体的に理解してもらうことが大切です。とくにSTD予防の重要性は、まだまだ男性側に浸透していない部分があるため、説得材料として有効です。
2. 「自分の将来」に踏み込んで話す
キャリア女子の場合、妊娠によって仕事がどう変わるのか、具体的にパートナーに伝えるのも有効です。たとえば「今の部署は残業が多く、妊娠したら続けられないかもしれない」「昇進試験を控えているので、今は妊娠できない」など、避妊するかしないかは自分のキャリア人生に直結する問題であることを冷静に説明しましょう。男性にとっては想像しづらい部分を具体的に共有することで、少しでも他人事でないと感じてもらいやすくなります。
3. コンドーム選びを一緒に工夫する
「コンドームは付けると気持ちよくない」という男性でも、薄型や形状に工夫のあるもの、サイズが合うものを選ぶと違和感が軽減されるケースがあります。女性が率先して「こんな種類があるみたいだよ」「試してみない?」とコミュニケーションをとり、一緒にドラッグストアや通販で購入するのも一つの手です。男性が恥ずかしがる場合はネット通販を活用したり、いくつか候補をピックアップしてあげたりするとスムーズに導入できるでしょう。
4. 婦人科受診やカップルカウンセリングを検討する
どうしても話が平行線になり、女性側が一人で悩みを抱え込んでしまうようなら、婦人科や専門カウンセリングの力を借りるのも大切な選択肢です。婦人科医から正しい避妊知識を男性に直接伝えてもらうことで、客観的な説得力が増すケースも多く、カップルカウンセリングでは「お互いの気持ちを冷静に言葉にする」環境が整えられ、建設的な話し合いを進めやすくなります。とくに人生設計に直結するテーマであるだけに、専門家を挟むことで男性も真剣に向き合わざるを得なくなるでしょう。
5. 自分の価値観を再確認する
最終的に、どうしてもパートナーが避妊に非協力的であり続けるならば、それは今後の関係を続けるかどうかを含めて考え直すサインかもしれません。キャリアや人生を大切にしたい女性にとって、相手が避妊を軽視し続けるのは深刻なリスクであると同時に、自分を尊重していない可能性があるからです。「避妊してくれない彼とこの先一緒にいて本当に幸せなのか?」という問いは、一度しっかり自分に向けてみるべきでしょう。
男性側にも求められる意識改革
ここまで主に女性の視点で悩みや対策を解説してきましたが、本来は男性自身が主体的に避妊を行う意識を持つことが何より重要です。近年はSNSやメディアを通じて性教育を学び直す動きが広がっており、若い世代の男性は特に「相手を守るためにコンドームをつけるのは当然」という認識を持つ人も増えています。一方で、30代以降の男性の中には性教育を十分に受けてこなかった影響もあり、誤解や偏見を引きずったまま大人になっているケースも少なくありません。
「性的同意(コンセント)」の概念の浸透
昨今、「性的同意なしの性行為は暴力である」という認識が広がりつつあります。避妊の有無も含めて、お互いが納得した上での行為でないなら、それは女性の権利をないがしろにしている可能性が高いです。実際、裁判で「女性が避妊具の使用を求めたのに男性が強行して妊娠させたのは性的自己決定権の侵害に当たる」と判断されたケースも出ています。男性は「相手が嫌がっていないからいいだろう」という曖昧な基準ではなく、「本当に自分の行為はパートナーの望むものか」をしっかり確認する姿勢が求められています。
学び直しの機会を積極的に作る
性に関する情報は、教科書や学校教育だけでなく、インターネットや書籍、専門家の講演などさまざまな方法で学び直すことが可能です。真剣にパートナーを思いやるのであれば、自ら進んで情報収集を行い、女性の身体や妊娠のリスクについて理解を深める努力が必要でしょう。性教育のセミナーやイベント、オンライン講座も増えているため、そうした機会を活用してパートナー同士で学ぶのも一案です。
まとめ
男性が避妊しない主な理由としては、快感重視・知識不足・責任意識の欠如など、いくつもの要因が複雑に絡み合っています。その結果として、女性側は望まない妊娠や性感染症、不安やストレス、キャリアへの悪影響など多方面でリスクを抱えることになりがちです。特に忙しくキャリアを積み上げようとする女性にとって、避妊の有無は今後の人生設計や仕事の継続にも直結するため、看過できない問題でしょう。
とはいえ、避妊の問題は本来カップルが協力して解決すべきもの。相手をただ責めるのではなく、正しい情報を共有し、リスクや将来設計について具体的に話し合うことで、男性の意識を変えるきっかけが作れるかもしれません。もし話し合いが難しければ、専門家を交えてのカウンセリングや婦人科受診など、第三者のサポートを活用する選択肢もあります。
最終的には、自分の身体やキャリアを守るために「どんなパートナーシップを築きたいか」を明確にすることが大切です。あなたが大切にしたい価値観や人生設計をパートナーが尊重してくれるなら、一緒に課題を乗り越えていけるはずです。反対に、避妊を含めお互いの意見を尊重し合えない関係であれば、今後の人生を長い目で見直す必要もあるでしょう。まずは一人で抱え込まず、情報を集め、適切なサポートを得ながら、あなた自身が安心して前に進める道を選んでみてください。